「気がつけば、もう降りる駅」という標語をご存じでしょうか。これは、2010年の読書週間(10月27日~11月9日)で使われた標語です。電車やバスの中で本に夢中になり、ふと顔を上げればもう降りる駅に着いてしまったという情景が思い浮かびます。私も電車やバスなどに長時間乗るときは、必ず本を持ち歩き読んでいます。(コロナ禍でこの2年ほどはそういう機会もめっきり減っていますが・・・)しかし、今や、電車やバスの中で周りを見渡すと本を読んでいる人はあまり見られず、スマホを操作している人がほとんどで、昔とは様変わりしてしまいました。(中には電子書籍を読んでいる人もおられるかもしれませんが・・・)
前回(平成29年)の公益財団法人全国学校図書館協議会及び毎日新聞社が実施した調査(5年に1回)の結果も、看過できるものではありませんでした。小学生の不読率(1ヶ月に1冊も本を読まない児童・生徒の割合)が5.6%、中学生が15%、高校生が50.4%と、学校段階が進むにつれて、子どもが読書をしなくなる傾向があると報告されているからです。
読書は、まだ子どもたちが経験していないことを間接的に経験させてくれ、いわゆる免疫をつけてくれます。その免疫は、これからの人生の中で困難に出会ったときに役立つものとなります。また、今まで見えなかった景色を、本を通じて見ることにより、より遠くのものが見えるようになってきます。さらに社会が広がり、年齢差や国、性別を越えた人の考えや気持ちに共感することができ、人に対する思いやりや優しさが育っていきます。
波賀小学校では、読書好きな子どもを育てるため、読書ボランティアさんに月に1度読み聞かせをしていただいたり、市の図書館から移動図書館ささゆり号でたくさんの書籍(あおぞら文庫)を運んでいただき、子ども達が借りられる本を増やしたりするなど、本に親しむ環境づくりを整える取組を進めています。
子どもたちには、ぜひ、いろいろな本に出会い心の栄養を補給したり、新しい世界に出会ったりしてほしいと思います。そのためにも、ご家庭でスマホやタブレットによる動画視聴やゲームの時間を減らし、ご家族で子どもたちと一緒に読書をする時間をつくってみられてはいかがでしょうか。
2021年の標語は「最後の頁を閉じた 違う私がいた」そして今年2022年は「この一冊に ありがとう」です。「人生を変えるような一冊、この本と出会って本当によかった。ありがとう。」と言えるような本が、この秋見つかりますように・・・
令和4年10月20日
校 長 髙井 和也