Home > 校長挨拶> 校長室通信 

 校長室通信

. >> 記事詳細

2020/12/01

クリスマス・プレゼント

| by 校長

クリスマス・プレゼント

 

 先月、伊水小学校の先生が結婚式を挙げられました。ウェディングドレスを纏われた綺麗な姿に感動しながら、また、主賓として招いてくださったことに恐縮しながら挨拶をしました。私は、その先生から感じる「優しさ溢れる」という言葉を何度も用いました。それは、育ててくださったご家族の皆様にも、新郎様をはじめそのご家族の皆様にも、以前の同僚の先生方からも大いに感じられました。関わってくださった多くの方々のご縁により、児童に対する指導にも、先生方に対する所作にも優しさが溢れているのだと確信しました。少し早いクリスマス・プレゼントをいただいたような嬉しい気持ちになりました。

 

 そんな時、ある小学校の先生の手記に出合いました。私の心の琴線に触れたので、ご紹介します。

 私が5年生の担任になった時、服装が不潔でだらしない子どもがいました。あるとき、その子の1年生からの記録が目に留まりました。「朗らかで、勉強もよくでき、将来が楽しみ」とありました。記録の間違いかと思いました。2年生、母が病気で時々遅刻をする。3年生、母親の病気が重くなり、教室で居眠りをする。後半には母親死亡。4年生、父親はアルコール依存症となり、子どもに暴力を振るう。私は胸に激しい痛みが走りました。放課後、その子に声をかけました。「夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない。」その子は初めて笑顔を見せました。それから、毎日教室で予習復習を熱心に続けました。

 クリスマスの午後でした。その子が小さな包みを私の胸に押しつけてきました。香水の瓶でした。私はその一滴をつけ、夕暮れに家を訪ねました。雑然とした部屋で独り本を読んでいたその子は、気がつくと飛んできて、私の胸に顔をうずめて叫びました。「ああ、お母さんの匂い!」6年生は担任ではありませんでした。

 卒業の日、私に1枚のカードが届きました。「先生は、僕のお母さんのようです。」

 それから6年、またカードが届きました。「明日は高校の卒業式です。奨学金をもらって医学部に進学します。」

 10年後、またカードが来ました。感謝の言葉と「父親に殴られた体験があるので、患者の痛みがわかる医者になれます。」と。

 そして1年。届いたカードは結婚式の招待状でした。「母の席に座ってください。」と、一行書き添えられていました。

 

 人は誰でも無数の縁の中で生きています。無数の縁に育まれて、人はその人生を開花させていきます。前述の伊水小学校の先生のように、私もたくさんのご縁をいただいてきました。手記を紹介した先生のようにはいかないとしても、子どもたち、そして先生方に、私がいただいたご縁を今後に役立つような素敵なクリスマス・プレゼントとして確実に届ける必要を感じます。なぜなら、それがお世話になった方々への恩返し、そして恩送りとなるのですから。

         

令和2年12月1日

校長  藤井 司郎


11:23
PAGE TOP